OUROBOROS

ウロボロス
2006 / 12min / カラー / ミステリー



 
STORY

主人公の女性はいつもと変わらない生活を送っていた。
だがある肌寒い夜、黒いレインコートを着た人物が殺人を犯している現場を目撃してしまう。
警察や友人に相談するもまともに話を聞いてくれない。
不安だけがつのっていく中、ある夜、再びレインコートと遭遇してしまう。
何とかその場は逃れたものの、それは悪夢の始まりに過ぎなかった。

執拗に彼女を追い回すレインコート。
心身ともに疲れ果てたある日、友人がレインコートの前で倒れている現場を目撃する。
あまりの恐怖に我を失ってしまう主人公。
よろよろと歩き、たまたま地下駐車場までやってきてしまう。
だが、そこで待っていたのはあのレインコートだった。
レインコートの足元には血のついた鉄パイプ、そして目の前にはラック用の鉄の棒、我に返った彼女はとっさにそれを手にし、無我夢中でレインコートに殴りかかる。
だが、フードの下から現れたのは、主人公と自身だった。

PRODUCTION NOTE


大学一回後期の映像課題、テーマ「虚実」で制作。
前回がコメディーだったので今回はシリアス系で行こうと心に決めていたのですが、やはり所々コメディー調のシーンが入ってしまいました。
別に狙ったわけではないんですけどねぇ・・・。


テーマ「虚実」というのを聞いて、まず最初に思いついたのが「主人公を二人出す」「二人の自分」という所謂「ドッペルゲンガーもの」。
まぁこの「虚実」というテーマには相当在り来たりな考えらしく、他にも数人このドッペルゲンガーものを作っていた人もいたりしました。
そんな中でこういうものを作るには、やはり人とは違った形で主人公を二人出すシナリオにする必要があり、そこが難しいところでもあるわけです。

そういうジレンマもあり、今回のこのシナリオに行き着くまでに、数回のストーリー変更等を行いました。
もっとも最初はクローンもの、クローンものは昔から興味があり一度撮って見たいと思っていたテーマの一つ。
しかしながら、現代劇としてのクローン映画は現実味に欠けるというかなんというか、やっぱりクローンとなると近未来劇という風にしたいわけで、そうなると超高層ビルやら空飛ぶ車やら、SF風に作りこみたくなるわけで…要するに時間がないと(笑
あとイメージにあうロケーションもない。
そういうわけで渋々断念、まぁ近未来ものはそのうちショートで撮ります。

クローンがダメなら、精神内での物語にしようと思い、考えたのが「精神病患者」を主人公にしたシナリオ。
自分が精神病だというのはラストにならないとわからないのですが、まぁ頭の中だから何やってもいいや、的なノリですね。
訳の分からない白い女に追われてみたり、紙袋被った謎の二人組みに鉄パイプでボコボコにされたり、車に轢かれても無傷の変な格好した日本刀男やら、もうグジャグジャの世界観ですね。
でもちょっとやりたいことやりすぎた感じで本気で何が何だか分からなくなってしまいました。

そこで先生方に意見を聞いたりアイディアをもらったりして、最終的なシナリオが完成したわけです。
これは要するにタイムパラドックスをテーマにした作品、時間軸のズレで過去と未来の自分が「レインコート姿」として見えるわけです。
主人公サイドと、レインコートサイドがあり、それぞれが同じ行動をしているんですね。
まぁ視点は主人公側にあるのでレインコート側は断片的にしか見ることは出来ませんが。
ところどころキーとなるシーン、例えば同じカットを2度使うなどで、観客に感づいてもらおうとしたのですが、最後の最後にレインコートが主人公の顔だとわかってからも、タイムパラドックスだとわかってくれる人はごく一部だったようで、ちょっと分かり辛かったかなと思っています。
もう少し分かりやすくしたほうがよかったかもしれません。

まぁ何だかんだ言っても正直なところ今回は「ボコボコにされるヴァイオレンスシーンを撮る」というのが「虚実」以前のマイテーマだったわけで、そういう点ではやりたいことできてよかったかなと(笑
やっぱり若いうちはやりたいことやらないと。


そしてキャスト、シナリオバージョン2くらいまでは男性主人公で行こうと思っていのですが、なんかここで男性を起用するのはありきたりかなと思い、女性キャストを起用することにしました。
こういうものは見た目のイメージから入るのが基本っぽいので、結構ダークなイメージのNさんに当初アポを取って出演依頼をしていたのですが、私のほうが学園祭の実行委員をしていて、公開一週間前まで制作のほうで全く動けないというまさかの事態に陥り、女優との時間が合わず急遽別件で仮のアポを取っていたHさんに出てもらうことになりました。
まぁ要するに一週間で創ったというわけですね(笑
でも素晴らしい演技で、もうホントよかったという感じです(笑
急な依頼だったのにこころよく引き受けていただき本当にありがとうございました!



タイトルについて
今作は公開直前まで"Like a Broken Record"というタイトルを付けていたのでが、ギリギリで改名しました。ちなみに現題を命名してくれたのはアリトです(笑
"Like a Broken Record"というのも意味合い的には結構あってたのですが、"OUROBOROS"のほうが「まさしく」な感じだったので、こちらにしました。
前者のほうはまたラブストーリーかなんかの作品に付ける予定です(笑

"OUROBOROS"(ウロボロス)とは古代の象徴の一つで、己の尾を噛んで環となったヘビもしくは竜を図案化したものなんですね。見たことはあると思います。
循環性や無限性という意味があり、まさしくこの作品にピッタリ。

その他詳細は下記リンクのウィキペディアにてご確認ください。

Picture:from wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%AD%E3%82%B9



制作にあたって
 ・夜間撮影

今作の多くを占める夜間シーン。
大きく分けて二つにすることができるのですが、両方とも同時に一晩で撮影しました。
注意深く観てもらうとわかると思いますが、主人公の服が同じです(笑)まぁお気に入りの服ということで。

交通量が比較的少なくなる夜21時くらいから集まったのですが、それでもまだ予想以上に交通量が多いのと思っていたよりもカメラの感度が悪く、うつりが悪すぎるという事態に。
そこで急遽、虚実制作のため山籠りをしていたアリトに連絡を取り、強力な懐中電灯を持ってきてもらうことに。以降この懐中電灯で全編のライティングをしました。
そんな感じで結局撮影開始したのは22時くらい、普通に準備不足でした・・・ほんとすみません。

ロケーションは、ライティングをしてもやはり全体的に暗すぎるので、当初予定したいてあたりから変更し、夜中でも明るい市バス倉庫横で撮影を行うことに。
これでだいぶ明るくなったのですが、懐中電灯との色調が違い、もろ光当ててますよ的な映像になってしまいました。
まぁ編集でまだましになりましたが。

やっぱり夜間撮影などは一度事前に試し撮りをしてみておく必要がありますね。
そんな感じで撮影が終了したのは5時くらい・・・ほぼ徹夜撮影でした。


 ・ラストのアクションシーン

正直、これまでのシーンは全てこのシーンのための前フリでしかなかったわけで、最初から静かなトーンで淡々と時間が流れてきたところに突然、壮絶なBGMと共にヴァイオレンスシーン。
こういうのを一回やりたかった(笑

ここのシーンは「絶対地下駐車場でないとダメだ!」という無駄に強くて熱い思いがあったのですが、この地下駐車場の撮影許可を取るまでが地味に大変でした。
映像学科のある芸大なんだから学内どこでカメラ回そうが俺様の勝手だ!的なノリでインフォメーションに駐車場の利用状況、出入りの多い時間やイベントで使うかどうか等々、を聞きに行ったのですが「撮影をするのですが」と言ったとたんに「そういうことは直接大学に言うんじゃなくて一回学科を通してからにしてください」と軽くあしらわれる有様。
軽く不機嫌になりながらも、仕方がないので学科のほうへ申請書をもらいにいくと「申請するのが遅い」だのなんだの言われ、相当不機嫌になりながらも駐車場の図面書いたりして、警備員の人に「何情報取ってるんだい?」と疑いの目で見られたり、図面が汚いからもっかいやり直して来いと数回追い返されたり…なんかね、この大学の事務関係はどうかと思いますね。
学生相手、しかも何も知らない一回生相手なんだからもっと分かりやすく対応してくれもいいと思うんですがね。
まぁ最終的には学科のおばちゃんもインフォメーションのおばちゃんも丁寧に対応してくれて撮影許可が下りたわけですが。

とはいっても時間的に余裕がなさ過ぎて、撮影許可が下りたのが早朝「6:30〜8:30」の2時間のみという短さ。
まぁこうなったらやるしかないので、最も重要なアクションシーンを2時間で撮りましたよ。
ほんと、早朝から来てもらったキャスト&スタッフの皆さん、ありがとう!



ここのシーンで必要になってくるのが血のついた鉄パイプ、略してケツ(血)パイプ。
前日朝方までこれと血糊を作っていました。

保存性も考えて、アクリル塗料で塗装を行うことに。
かたまり感もほしかったので重曹でも混ぜようかと思ったのですが、あいにく切らしていたので塗装後に木工用ボンドを所々に塗ってデコボコ感をだしてみました。

血の飛び散った感じを出すためにドライブラシで塗装をしています。



血糊はこんな感じですね。
テストでは若干薄くなってしまいましたが、本番使用したものはドロドロでどす黒いもの、でも地下駐車場というロケーション&制限時間の問題でほとんど使用できませんでした・・・。
まぁ、あるのとないのとでは大違いですが。

レシピを知りたい方はこちらを参照してください。


まぁ血糊はこれからの撮影でも何かと必要になってくると思うので、私の場合は(笑)
少量でも一度使ってみて、どういうものか理解できたのはよかったように思いますね。






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